芸夢古事記
第1部
アマテラスは実は芸夢が好きだった。
「芸夢」というのは現実とは違う夢の世界の中で新しい自分になり、
次に進むためにいろんな謎解きをしないといけない一種の遊びであり、
一瞬でも別の人生を体験ができるようなことであった。
常に考えることが沢山ある彼女は頭の遊びである芸夢が好きだった。
しかし太陽の神という重要な役割を持っていたため、
「芸夢をするのが好き」という自分の好みを表に出すことは一切なかった。
自分に与えられた役割を全うする一方で、
本来の自分を隠したままで生きていた。
他の神々も芸夢を楽しんでいた時期はあったが、
各々に与えられた役割を優先し、次第に芸夢からは遠ざかり、
することもなくなっていった。
普通に大人らしく、芸夢なんかには全然興味はなかった。
重要な役割がある神が「芸夢などにうつつを抜かすものではない。」と、
成熟した神がゲームをすることは神々の中ではあり得ないことだった。
芸能の神であるウズメだけは違った。
芸能を司ることもあり、彼女は遊ぶことに本気で向き合っていた。
いつも新しい遊びに熱中になり、誰よりも芸夢を楽しんでいた。
遊びは生きる上で絶対に必要なものではないことから他の神々はそんなウズメの役割を軽んじ、
彼女の話に耳を傾ける神はいなかった。
そのため、ウズメは神々の中では浮いた存在だった。
神々が芸夢に関心がなかったことと、
アマテラスが公言しなかったことから、
アマテラスが芸夢好きであることは誰も気づいていなかった。
ただ、芸能の神様であるウズメにはアマテラスが芸夢好きということがよく伝わっていた。
なんとなく。
続く。